山でナデシコを見て思った事。
ナデシコは、日本の女性を形容するのに使われる花で、有名です。
「万葉集」でも、愛する女性をなでしこに例えた歌があり、「古今和歌集」でも女性の比喩となっています。
この夏休みは、2種類のナデシコに出会い、この不思議な形態の花弁と、ピンク色に魅せられて、日本女性を大和撫子(カワラナデシコ)に例えた由来を、よく知らなかったので、調べてみました。
下の写真のようにか細い茎に薄く細かく裂けたピンクの花弁。
いかにも可憐で清楚なイメージの花です。
大和撫子とは、三省堂の辞書では、「日本女性の清楚な美しさを讃えて言う語」
広辞苑さんは、「日本女性の美称」
Wikipediaでは、「日本人女性を指す昔の言葉」と、バッサリ。
「昔」だそうです。
まずは、「撫子」という言葉の成り立ちは、
神話の世界からの引用なので、どうなのかしら?と思いますが、毎年、娘をヤマタノオロチの生贄に捧げている、父アシナズチノミコトと母テナズチノミコトに、手足を撫でるように大事に育てられたというクシナダヒメの神話から来ているという説があるようです。
大切に育てられた美しいクシナダヒメは、ヤマタノオロチ退治に訪れたスサノオノミコトに見染められます。
スサノオノミコトは、ヤマタノオロチ退治が成功したら娘を妃にしたいと両親に申し出て、無事にオロチ退治達成、クシナダヒメはスサノオノミコトの妃になるという物語。
「ナズ」は、撫ず(なでる)で、父と母の名前とかけて、クシナダヒメのように、撫でるように愛され大切に育てられた子のことを「撫子」と呼ぶようになったようです。
ナデシコの可憐な花は、その様に人に愛されるイメージとリンクした花らしく、昔の人が、ナデシコを見た時に、女性であったり、子供であったり、大切にしたい人を思い浮かべて、撫でたくなるような花なので、ナデシコと呼ぶようになったようです。
なるほど。
ナデシコと言う、花の名前の前に、あえて「大和」がついた由来は、平安時代に、中国から、外来種のナデシコが入ってきて、それを「唐ナデシコ」と呼ぶようになり、日本の固有種を区別して、あえてヤマトナデシコと呼ぶようになったらしいです。
写真はWikipedia から。
Chinese pink とも言います。だいぶ雰囲気が違いますよね。
けっこう派手なイメージです。カーネーションに近いですね。
これは、さすがに、平安時代の人も、同じナデシコ科でも区別したのですね。
確かに、ヤマトナデシコは、可憐で清楚で繊細で優しい花です。
万葉集や古今和歌集などで、愛する女性や子供、時には男性の比喩に使われたところあたりから、女性の美称になったのでしょう。
他に、女性に喩えて相応しい花は沢山あると思うのですが、あえて、ナデシコになったのは、当時の流行の花だったような気がします。(あくまで個人的意見)
下の写真はタカネナデシコです。 カワラナデシコの高山型です。
冬の間は冷たい雪の下。生えているのは、岩場や礫場なんです。
カワラナデシコよりも、かなり花弁の切れ込みが深く裂けていて華やかな感じがしますが、可憐さには変わりありません。
茎は細くてしなやかです。
厳しい高山の環境で美しい花を咲かせます。
タフな環境下でも、美しさに満ち溢れている。
本当のヤマトナデシコは、男性、女性に限らずともメンタルもフィジカルも強いいさぎよい人の事なのかも。